誰でも手軽に筆で字が書ける
習字や書道をたしなんでいる人であればその苦労が分かるだろう。 墨をすって、半紙を用意し、周りを汚さないように養生する。字を書いた後には掃除だ。筆に付いた墨を水でよく落とし、ときには飛び散った墨汁を落とす必要もある。畳の上や自分の洋服であった場合には、それこそ相当な労力とコストがかかることは、普段筆で字を書いている人であれば誰でも知っていることだ。 町田市に工房を構える(資)木と字の神林が、 2009年7月に発売した「水書きグー」は、上述した書道におけるわずらわしさを一切排除した画期的なアイデア商品。 同商品を使えば、誰でもどこでも手軽に筆で字を書くことができる。
書道の道に生きる者の宿命
同社の創業は1964年。 看板制作事業、書画制作事業の2大業務でこれまで歩んできた。会長であり書道家である神林金哉氏と、弟であり社長である神林隆成氏が二人三脚で歴史を刻んできた会社になる。 「私はとにかく大きい字を書くことが好きでね」
そう話す金哉氏が得意とする仕事は、無垢材の大きな木の一枚板に向かって、自ら考えたオリジナルの書を刻むこと。 大きいものでは幅3メートル、高さ1メートルを超すものもあり、100万円以上の価格が付くこともあるという。 「私が書いている文字は芸術作品ではなく、あくまでクライアントが望む『看板』です。 当然、商品ができあがるまでには何度もサンプルの書を書き、先方と打ち合わせをする必要がある。 その作業の大変さといったら......」 想像してほしい。 人の身体の大きさほどもある半紙に向かってサンプルを書き続ける金哉氏の姿を。 それだけ大きな字を書くのだから、筆もでかいし半紙のサイズも半端ではない。墨汁の量だって相当なものだ。 さらに、筆文字ならではの"撥ね"の際には、墨が四方に飛び散ることは明らか。 1メートル角のサンプル文字を書くのに、必要な養生は5メートル角も必要だという。 さらに、大きな半紙ということで価格も高い。安いものでも一枚数千円はするそうだ。 サンプル製作だけで相当なコストと労力、時間がかかっていることが、看板製作現場の裏にはあったのだ。 さらに、サンプルで書いた紙はいずれゴミとなる。 日々の仕事を通じ「いつか、手軽に筆で字を書くことができる書道セットが欲しい」と金哉氏は20数年前より熱望していたという。 その思いが実現したのが2009年夏。3年半の開発期間を経て、「水書きグー」は誕生した。
「水書きグー」とは
繰り返しになるが、「水書きグー」最大の特長は 「水」と「筆」と「水書きグー」があれば字が書けること。墨は必要ない。 さらに、時間が経てばその字は水の蒸発に伴い消え、 何度でも繰り返し同じ紙の上に字を書くことができる。 また、 開発した金哉氏が大きな字を書くことをライフワークとしているだけあって、 紙のサイズが大きいのも特長だ。縦1メートルを基準とし、幅は最大10メートルまで用意した。
筆者も実際に体験したが、たまたま色の付きやすい服を着ていたこともあって、いざ筆を手にした時は、「墨が服に付かないように気を付けなければ」と身構えた。人間の習慣というのは恐ろしいものだ。筆者が筆先に付けたのは水だったのだから(笑)。 筆に水を付け「水書きグー」に筆を降ろすと、すぅーっと昔懐かしい書道の感覚が脳裏に蘇ってくる。思わず筆を走らせた。 色は全部で5色。ピンク、黒、赤、緑、青。 「この商品を開発した理由は、確かに仕事の効率化ということもありますが、 それ以上に、今日本人が忘れかかっている筆を使って字を書くという日本伝統文化の素晴らしさを、 大勢の人たちに再び味わってほしいからなんです」
筆文字を書くという 日本伝統文化の復活・維持を提唱
10年前に800万人いた書道人口は、 今ではその半分の400万人にまで減ったと金哉氏は教えてくれた。 だが、その実は上記したような書道道具の用意のわずらわしさが原因であり、筆を使って文字を書くことそのものが嫌いになったわけではないと金哉氏は強調する。
そのことはこれまで延べ約5000人の人たちにワークショップを通じで、「水書きグー」を実際に体験してもらった反応から確信したという。 「普段字を書いていない人がいざ書こうとすると『私は下手くそだから......』と尻込みしてしまう。 でもね、一度書き出すとその心地よさが蘇るんでしょうな。皆、気持ちよさそうに筆を走らせます。 私どもの「水書きグー」があれば、その心地よさを容易に体験できるんです」 筆者が先に感じたのもまさにこのことだ。 一時お経を写し書きする「写経」がはやったのは、日本人が古来より持っている筆で字を書くことの心地よさを、現代人が心のどこかで望んでいるからに違いない。
教材や携帯書道具として爆発的ヒットの予感
発売以来、幼稚園・保育園児の学習教材として高い評価を受けている「水書きグー」は、日に日に世間からの認知度を高めている。 書道家や書道教室の道具として。また、認知症対策として老人ホームからの問い合わせの他、僧侶や住職といった人たちからの支持もあるという。 「こないだ『水書きグー』を購入した住職は、よく出張に行くそうなんです。 その際、毎朝欠かしている習字の準備が大変だということで、『水書きグー』のおかげで持ち物は減ったし、 出張先のホテルの部屋を汚すことなく、大変助かっているというお言葉をいただきました」 取材前は時代にマッチしたエコ商品としてとらえていた感もあったが、 その実は伝統文化復活を提唱する書道家の熱き思いが埋まった商品であった。 もちろん、地球環境に優しいことはうれしいと、金哉氏も言っていることは付け加えておく。 今後、爆発的なヒット商品となる予感を「水書きグー」に感じた。
誰でも手軽に筆で字が書ける
習字や書道をたしなんでいる人であればその苦労が分かるだろう。
墨をすって、半紙を用意し、周りを汚さないように養生する。字を書いた後には掃除だ。筆に付いた墨を水でよく落とし、ときには飛び散った墨汁を落とす必要もある。畳の上や自分の洋服であった場合には、それこそ相当な労力とコストがかかることは、普段筆で字を書いている人であれば誰でも知っていることだ。
町田市に工房を構える(資)木と字の神林が、
2009年7月に発売した「水書きグー」は、上述した書道におけるわずらわしさを一切排除した画期的なアイデア商品。
同商品を使えば、誰でもどこでも手軽に筆で字を書くことができる。
書道の道に生きる者の宿命
同社の創業は1964年。
看板制作事業、書画制作事業の2大業務でこれまで歩んできた。会長であり書道家である神林金哉氏と、弟であり社長である神林隆成氏が二人三脚で歴史を刻んできた会社になる。
「私はとにかく大きい字を書くことが好きでね」
そう話す金哉氏が得意とする仕事は、無垢材の大きな木の一枚板に向かって、自ら考えたオリジナルの書を刻むこと。
大きいものでは幅3メートル、高さ1メートルを超すものもあり、100万円以上の価格が付くこともあるという。
「私が書いている文字は芸術作品ではなく、あくまでクライアントが望む『看板』です。
当然、商品ができあがるまでには何度もサンプルの書を書き、先方と打ち合わせをする必要がある。
その作業の大変さといったら......」
想像してほしい。
人の身体の大きさほどもある半紙に向かってサンプルを書き続ける金哉氏の姿を。
それだけ大きな字を書くのだから、筆もでかいし半紙のサイズも半端ではない。墨汁の量だって相当なものだ。
さらに、筆文字ならではの"撥ね"の際には、墨が四方に飛び散ることは明らか。
1メートル角のサンプル文字を書くのに、必要な養生は5メートル角も必要だという。
さらに、大きな半紙ということで価格も高い。安いものでも一枚数千円はするそうだ。
サンプル製作だけで相当なコストと労力、時間がかかっていることが、看板製作現場の裏にはあったのだ。
さらに、サンプルで書いた紙はいずれゴミとなる。
日々の仕事を通じ「いつか、手軽に筆で字を書くことができる書道セットが欲しい」と金哉氏は20数年前より熱望していたという。
その思いが実現したのが2009年夏。3年半の開発期間を経て、「水書きグー」は誕生した。
「水書きグー」とは
繰り返しになるが、「水書きグー」最大の特長は
「水」と「筆」と「水書きグー」があれば字が書けること。墨は必要ない。
さらに、時間が経てばその字は水の蒸発に伴い消え、
何度でも繰り返し同じ紙の上に字を書くことができる。
また、
開発した金哉氏が大きな字を書くことをライフワークとしているだけあって、
紙のサイズが大きいのも特長だ。縦1メートルを基準とし、幅は最大10メートルまで用意した。
筆者も実際に体験したが、たまたま色の付きやすい服を着ていたこともあって、いざ筆を手にした時は、「墨が服に付かないように気を付けなければ」と身構えた。人間の習慣というのは恐ろしいものだ。筆者が筆先に付けたのは水だったのだから(笑)。
筆に水を付け「水書きグー」に筆を降ろすと、すぅーっと昔懐かしい書道の感覚が脳裏に蘇ってくる。思わず筆を走らせた。
色は全部で5色。ピンク、黒、赤、緑、青。
「この商品を開発した理由は、確かに仕事の効率化ということもありますが、
それ以上に、今日本人が忘れかかっている筆を使って字を書くという日本伝統文化の素晴らしさを、
大勢の人たちに再び味わってほしいからなんです」
筆文字を書くという
日本伝統文化の復活・維持を提唱
10年前に800万人いた書道人口は、
今ではその半分の400万人にまで減ったと金哉氏は教えてくれた。
だが、その実は上記したような書道道具の用意のわずらわしさが原因であり、筆を使って文字を書くことそのものが嫌いになったわけではないと金哉氏は強調する。
そのことはこれまで延べ約5000人の人たちにワークショップを通じで、「水書きグー」を実際に体験してもらった反応から確信したという。
「普段字を書いていない人がいざ書こうとすると『私は下手くそだから......』と尻込みしてしまう。
でもね、一度書き出すとその心地よさが蘇るんでしょうな。皆、気持ちよさそうに筆を走らせます。
私どもの「水書きグー」があれば、その心地よさを容易に体験できるんです」
筆者が先に感じたのもまさにこのことだ。
一時お経を写し書きする「写経」がはやったのは、日本人が古来より持っている筆で字を書くことの心地よさを、現代人が心のどこかで望んでいるからに違いない。
教材や携帯書道具として爆発的ヒットの予感
発売以来、幼稚園・保育園児の学習教材として高い評価を受けている「水書きグー」は、日に日に世間からの認知度を高めている。
書道家や書道教室の道具として。また、認知症対策として老人ホームからの問い合わせの他、僧侶や住職といった人たちからの支持もあるという。
「こないだ『水書きグー』を購入した住職は、よく出張に行くそうなんです。
その際、毎朝欠かしている習字の準備が大変だということで、『水書きグー』のおかげで持ち物は減ったし、
出張先のホテルの部屋を汚すことなく、大変助かっているというお言葉をいただきました」
取材前は時代にマッチしたエコ商品としてとらえていた感もあったが、
その実は伝統文化復活を提唱する書道家の熱き思いが埋まった商品であった。
もちろん、地球環境に優しいことはうれしいと、金哉氏も言っていることは付け加えておく。
今後、爆発的なヒット商品となる予感を「水書きグー」に感じた。
文章・写真:杉山 忠義
http://tadao-factory.com/
東京都 町田市 つくし野 1-28-8